牧歌的なストリップへ行った(全年齢版)

某地方都市へ出張してきた。17時頃に仕事が終わり、駅前をぶらついていると年季の入ったストリップ劇場があった。手作り感あふれる立て看板に「素人ショー」と書かれている。一度はストリップを観てみたいと思っていたので入場した。

 

基本料金は5000円。学生割引やシニア割引もある。チケットを購入すれば、一日中観られるようだ。

劇場は中学校の教室程度の広さ。真ん中に高さ1mほどのステージが設けられている。ステージと客席最前列の距離は2mほどだ。設備はお世辞にも新しいとは言えない。暗幕がガムテープで補修されていたり、電球がいくつか切れていたりした。空調機もガーガー鳴る旧式のもの。スピーカーは音割れしている。

観客は僕を含めて4人。サラリーマン風のおじさんと、退屈そうな顔をしたお爺ちゃんが2人いた。

演目のタイムスケジュールは、ダンスといった定番ショーの合間に日替わりショーが挿入されるかたち。各ショーの時間は15分~30分ほどだ。

 

その日の日替わりショーは「マッサージ」だった。マッサージ担当の「ミズキちゃん」と、司会役の「ユリちゃん」がステージに現れる。2人とも50歳前後だろう。服は着ていた。

「マッサージをされたい人いますかー?」ユリちゃんが客席に呼びかけるも、誰も手を挙げない。再度呼びかけるも反応はなし。そのまま1分ほど経った。気まずい沈黙に耐えかねたのか、サラリーマン風のおじさんが挙手、促されるままにステージにうつ伏せになった。

 

黙ったままミズキちゃんがおじさんの肩を揉み始める。エッチな要素は全くない普通のマッサージだ。その間、ユリちゃんはボーっと時計を眺めている。僕と他のお客さんも無言でステージを見上げている。聞こえるのは空調機の音だけ。10分ほど過ぎた。「はい終了です。もう1人いませんか?時間が余ってるんですけど……」ユリちゃんが劇場を見回す。僕と目が合った。この雰囲気は断れない。ステージに上がる。

 

スポットライトを浴びながら肩を揉まれるのは生まれて初めての経験だった。突然、ミズキちゃんが声をあげる。「ものすごく肩が凝ってる。バッキバキよ。」ユリちゃんは「若そうなのに……仕事が忙しいの?」と心配をしてくれた。客席に戻っていたサラリーマン風のおじさんは僕に年齢を尋ねてきた。25歳と答えると驚いたようだった。「俺と倍以上の歳の差じゃないか!息子より若いぞ。」

 

これをきっかけに劇場内の空気が少し和んだ。マッサージの最中、僕とおじさんとミズキちゃん、ユリちゃんの4人はグダグダと雑談した。仕事のこと、趣味のこと。10分はすぐに過ぎた。残りの観客である2人のお爺ちゃんは終始退屈そうだったけども。

 

その後いくつか演目を観て劇場を後にした。心なしか肩が軽い。ミズキちゃんの腕前は確かだった。