「1518! イチゴーイチハチ!」は良いぞ

 挫折からの再生物語

 

 マンガ「1518! イチゴーイチハチ!」(小学館刊)は、高校の生徒会を舞台にした青春群像劇。作者は相田裕氏。代表作には体を戦闘用に改造された少女たちの苦悩と小さな幸せを描く「GUNSLINGER GIRL」がある。

 

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 本作のテーマは挫折からの再生だ。主人公は烏谷公志郎(烏谷)と、丸山幸(丸ちゃん)の新入生2人。中学時代の烏谷は、将来を嘱望されるエースピッチャーだった。しかし、肘の故障で選手生命を絶たれる。高校に入学するも失意の日々を過ごす彼は、丸ちゃんから生徒会へ誘われる。当初はしぶしぶ生徒会活動に参加するも、次第に没頭。野球への未練を断ち切り、新たな楽しみを見出していく。

 一方、烏谷を生徒会へ誘った丸ちゃんは、今まで打ち込めるものがなかった少女。中学時代に観戦した試合で、烏谷の活躍に目を奪われた経験を持つ。彼女は烏谷との交流を通して、自分のやりたいことを探していく。

 「誰しも部活動や競技などをやめるタイミングが人生にあると思います。その感傷みたいなものをひとつのテーマとして描いています。感傷的になりつつも次の人生へと明るく踏み出す物語です」(相田裕氏・Twitterでの投稿)。

 

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(烏谷。生徒会活動を通して前を向き始めた)

 

 本作の魅力のひとつが、楽しげな高校生活だ。彼らが通う松武高校(私立松栢学院大付属武蔵第一高校)は、県内トップ公立校の併願高校。「受験で負けたが、高校生活では負けない」をスローガンに学内イベントを充実させる。もちろん生徒会メンバーも、新歓マラソンやPRムービー作成、甲子園予選の全校応援などに奔走。また日々のバカバカしいやり取りでも盛り上がる。

 学園モノお約束の恋愛要素もある。野球一筋だった烏谷が、丸ちゃんに思いを寄せていく過程はこそばゆい。相田裕氏はTwitterにて「勉強して恋して放課後の活動をする目まぐるしい高校生の日々を描くことが、世代を超えた共感になっているのかなと思います」と日常描写へのこだわりを見せる。

 

 本当に大好きなマンガ。失意の底にいた烏谷が、生徒会メンバーや家族、クラスメイトとの交流で笑顔を取り戻していく姿に勇気づけられる。挫折を味わった人、困難に直面した経験がある人にこそオススメ。また「GUNSLINGER GIRL」と毛色は違うも、通底するテーマもあるので、同作ファンも敬遠せずに読んでほしい。

……こんな高校生活を過ごしてみたかったな。